秋の こもごも


秋の実りは甘甘でvv



このところ、ブッダは “ポップオーバー”とかいうデニッシュに凝っていて。
何てのかな、
大きさや形はカップケーキみたいに小分けされていて、
クロワッサンなどの“デニッシュ”と シュークリームの側生地のハーフという感じの、
見た目と食感をしており。
油分的、かつ塩分的にはパンケーキよりも、
砂糖含有量的にはカップケーキやマフィンよりもあっさりした、
朝ごはんやランチ向けのパンの一種というところかと。
いつものこしらえでも特にマンネリとか感じてはなかったイエスが、でもでも、
これはまた画期的な朝になったねと、
一瞬でばっちり目を覚ましてしまった斬新さでもあり。

 「凄いなブッダは、こういうのどこで覚えてくるの?」

時々バイトに引っ張り出されたり、
コンビニ大好きの余波で女子高生とも付き合いの多いイエスと違って。
時々請け負う仕事といったら 天界漫画家としての執筆という在宅もの。
毎日のように足を運ぶ先といや、
隠しアイテムのようにこそりと用意されている
“今日のお買い得商品”を見落とせないスーパーマーケットか、
書店の店頭での婦人向け生活雑誌の立ち読みか、
児童館に出張している図書室かという身なだけに。
こういう“イマドキ”の話題を拾えそうにないという印象が強いのだけれどと。
凄い凄いと伴侶様を褒めつつも、
きつね色にこんがりサクサクに焼けた 軽い食感が病みつきの
焼きたてのポップオーバーを手に、
こちらもブッダ特製のイチジクのジャムや、
甘みと香ばしさがばっちりという半熟に焼いてもらった目玉焼きを、
交互にちょいと塗り付けては、
うまうまと目を細めて堪能しておいでのイエスから訊かれて、

 「どこって。そうだな、う〜んとね。」

テレビの情報番組だったかな、ああいやいや、
これは確か、お料理上手などっかの奥さんのブログだったと思うよと応じつつ。
そちらも手が込んでいよう、
ズッキーニをピューラーで薄切りにしたのをクルクルと巻いて
爪楊枝で止めたのを衣をつけて軽く揚げたもの。
昨夜の晩ご飯で食べたのが残っていたのでと、
今朝はその上へピザ用のチーズを掛けてオーブンで焼いて、
これもどうぞとテーブルへ運んで来て、やっと自分の食事に取りかかる彼だったりし。

 「うあ、どうしよう。軽いからいくらでも食べられちゃう。」

あっさりしているので何にでも合い、
ポタージュ仕立てのコーンスープにつけても乙だとしつつ。
一応は大きめの皿に山盛りという勢いで出されているが、
だからといっても食べ過ぎてはいけないのでは?と思うたか。
お行儀の模範にしている人を相手にしているかのように、
やや心配するよな、伺うような気配を見せるイエスなのへ、

 「うん、い〜っぱい食べて。」

そもそも、
少しだけでも腹持ちがいいというような
ダイエット食とか節約食とかじゃあないからねと。
にぃっこり笑って付け足し、

 「すぐにもお腹いっぱいにはならないから、
  いろんな食べ方が出来て楽しいでしょ?」

自分も手を伸ばしてお代わりのもう1つを手にするブッダ様。
躾けのいい綺麗な手の所作をうっとり見やり、

 “限りない慈愛を施す如来様だものねぇvv”

ズッキーニの天ぷらもチーズ乗っけてますます美味しかったけど、
ジャムもミルクティーも甘くて美味しかったけど。
彼からの甘やかしとか、それよりなにより
こちらからの視線へ“んん?”なんて小首を傾げ、
ああほらお髭にパン屑がなんて、そおと摘まんでくれる
優しくも美しい姿の方が

 「何倍も甘くて美味しそう〜〜〜vv」

 「…イエス、朝っぱらから意味不明なこと叫ばない。////////」

真っ赤になったってことは
少なくとも誰か様には意味不明とも言い切れないよな気がするが。(笑)
ぽぽんと紅色のバラが咲いた茨の冠だったのへ、
こちらも微妙に目許を赤く染め、
もうもうもうと含羞みまくっておいでだったりする。

 「はぁ〜、美味しかったvv」

朝っぱらからいろんな意味での甘い至福を堪能し、
お片づけも済ませて卓袱台の前へ戻ってくれば。
午前のワイドショーを流していたテレビでは、
お馴染みのMCさんが季節の話題を扱っているところ。

 「わ、ブッダ観てよ。北海道ではもう雪だって。」
 「凄いねぇ。」

今年は秋も前倒しでやってきた感があったが、
実は実は、いろんなところの初冠雪の便りは
例年に比すれば数日遅いめだったりするらしく。

 「そういや、木の葉の色づきの中継とかもまだあんまり見ないよね。」

銀杏や楓の紅葉は、桜前線と逆で北からの南下。
特に銀杏は微妙に遅くて、10月中旬頃から色づき始め、
北海道が10月末で、秋も深まる11月中旬から下旬にかけて本州へ南下し、落葉を迎える。
ギンナン拾いは葉の色づきが始まってからで、
早いところで九州が9月下旬から10月初め、
関西や関東では11月からというところかと。
神宮外苑の銀杏並木とか、業者の人が掃除を兼ねて拾いまくるんでしょうねぇ。

 「でも、栗はよく実ってたよねvv」
 「うんうん、たくさん拾えたものねvv」

今年の“町内会主催・秋の行楽ツアー”は
近郊の農園までマイクロバスで出かけての 栗拾いとあって。
こちらの最聖のお二人も勿論のこと参加して、
いいお天気になったのを幸いに、
心地のいい秋空の下でワイワイと盛り上がりつつ、
つやつやした栗を籠いっぱいに拾って来た。

 「枝を揺すって落とすとか、木からもぐのかと思ったら、」

だとしたら あのとげとげには要注意だねとか、
イエスはもう十分に痛さという加虐には耐えているのだから 此処は私がとか、
妙な覚悟を心の声にて張り合ってしまったお二人だったが。
農園の担当者から、
足元に落ちているのがようよう熟した実なので、
いがを靴底で左右から挟み込むようにして開いて
中の実を炭火用のトングで摘まみ上げればいいですよと指導され、

 「自分から落ちてくるなんて、なんて潔きことか。」

確かマンゴーもそうですよね、
完熟梅は、幾つか落ち始めたら収穫時期とか言わなかったかな?
(落ちたのは傷になってる場合が多いので、商業的には使わないそうですが。)
などなどと、
植物の在りようへも 関心なことよと感慨深くなっておいで。
さすがは収穫の秋でもあって、
殊に、滋養のある根野菜が美味しい季節だから、
旬のレンコンとかごぼうは絶妙な繊維質がサクサクとしていて、
煮物にしてもその食感が楽しめるし、

 「サツマイモやかぼちゃの煮物も、ほくほく甘くておいしいよね。」

芋たこなんきんって関西でしか言わないそうですね。
井原西鶴が
“とかく女の好むもの、芝居 浄瑠璃 芋蛸南瓜”と記したことからの謂れで、
タコが出てくるのはそちらも甘めに炊いた煮物を差してのこと。
芋もかぼちゃも砂糖を使わずとも甘く仕上がったこととか
安く手に入ったことなどから察して、
少々蔑みも入った表現に違いなさそうですが、
栄養価も高い“旬”に 美味しいものを食べるのは間違ってないわけで。

 「…で、キミ、今から何するの?」

卓袱台へ大きめのボウルと包丁とを持ってきたブッダ様。
流しの横の調理台で手掛けるのが基本の下ごしらえ作業を、
水回りでなくてもいい場合、テレビ観つつと構えるのはよくあること。
絹さやの筋を取るとか、枝豆を茎から刈るとか、
グリーンピースを鞘から出すとかいった作業なら、
イエスもお手伝いできるので、
今日のは何々?とちょいと首を伸ばして覗き込めば、

 「うん。これ剥くの。」

ボウルを少しだけ傾けて、水につけてあったらしい栗を見せてくれる。

 「え? 手で剥くの?」

というか、火を通す前のって、つまりは拾った時のままってことだよねと、
カブトムシの外殻を思わせるほどつやつやで堅かったの思い出しつつ、
それをまずはと摘まみ出したの見やっておれば。

 「うん。水に一晩つけといたから、少し柔らかくなっててね。」

焼いたりざっと湯がいたりして剥く方法もあるそうだが、
火を通してしまうとその後の調理での煮加減が素人には難しいとか。
やわらかくなりすぎても、ごはんと一体化しちゃいかねないのでと、
ブッダは一番オーソドックスな、地道な方法をとったようで。
何でもできる器用な指でしっかり押さえて挟み持つと、
包丁の柄の傍の角を使い、お尻側のがさがさしたところから刃を入れ、
くりくりと削るように剥いてゆく。
一見、柿やりんごでも扱っているような手慣れた様子だが、
余程しっかと押さえこんでいるものか、白い指先が真っ赤だし、
テレビを観つつにしては、手元からあまり目を離さない彼でもあって。
きちんと正座しての作業は禅での修行のようにも見えて、

 「じゃ、じゃあ私は…。」

一人だけ何もしないのは心苦しいか、
辺りをきょろきょろするヨシュア様なのへ、

 「イエスはそこで座ってて。」

柔らかな口許を弧にたわめ、ふふと小さく微笑って、
窘め半分な口調で進言し、

 「こういう仕事はね、自分のためにすることじゃあないの。
  食べてほしい、美味しいって笑ってほしい人のためにやることだから、
  そう、私が独占しちゃいたいだけ。」

だからイエスはわくわくと観ててと続けた釈迦牟尼様なのへ、

 “ああそうそう、繕い物するときと同じ顔するんだね。”

伏し目がちになって手元を見下ろす
慈愛のこもったお顔にほおと見とれてしまう。
本来、それは気真面目で優等生で、
悟りを開くまでに破天荒な修行を散々やったとはいえ、
それらは自身の懐の尋を深く広く押し広げるためだったような人。
芯の強い、頼もしい人性であることを基盤にし、
その上へ構築された優しき慈悲だけに、
根気もあって打たれ強くて、
どれほど荒んだ者でも限りなく癒してしまえることは明白で。

 “私なんて甘えたれが一目惚れしちゃったのも道理ってもんだしvv”

わあ、もう3つも剥いちゃったよ凄い凄いと感心しつつ、
あ、やっぱり睫毛長いなぁ、
口許も瑞々しいのが可愛いなぁ、なんて。
興味津々というのとは別口、
ブッダ自身への甘い感情がもたらす微妙な熱まで伝わったのか、

 「〜〜〜いえす。///////」
 「なぁに?」

にっこり笑って“観ててっていうからvv”と言い返す無邪気な神の子さまへ、
その通りなだけに二の句が継げなくなった、
まだちょっとこっちの甘い感覚へは
堅物なところが抜けない如来様だったようでございます。

 今宵の栗ご飯は甘さもひとしおなのでしょうねvv



   〜Fine〜  15.10.14.


 *何かよく判らない“食いしん坊万歳”ものになっちゃったなぁ。(笑)
  生栗の皮むきは、結構難しいですよね。
  お尻側のところは渋皮がくっついてるからと、
  まんまスパンと切り落とせなんて説明もあって。
  そんな勿体ないことは出来ない私なぞは、
  地道に向いてく派です。

  時々通っている某企業サイトさんで拾ったのが、
  冒頭の“ポップオーバー”という朝食アイテムでして。
  エッグベネディクトやパンケーキ、フレンチトーストに続いて
  というよな紹介をされていたような…。
  よくもまあいろいろと情報を見つけてきますよね、皆様。
  マフィン型でもココットでも紙カップでも焼けて、
  ふくらんで縁からあふれんばかりになるきつね色の焼きたては
  さくり・もちもちという食感も楽しいとかvv
  いやぁ、食欲の秋ですねぇvv


めーるふぉーむvv
ご感想はこちらへvv

bbs ですvv 掲示板&拍手レス


戻る